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大阪家庭裁判所 昭和52年(家)1351号 審判 1977年11月18日

本籍・住所 大阪市

申立人 北山通夫(仮名)

本籍 不詳

最後の住所 大阪市

被相続人 萩原和夫(仮名)

主文

被相続人の相続財産である別紙目録(略)記載の物件を申立人に分与する。

理由

一  申立人代理人は申立の趣旨として主文同旨の審判を求め、申立の実情として次のとおり述べた。

(1)  申立人の母北山信子(大正三年一一月一六日生)は昭和一八年頃被相続人と事実上の婚姻関係に入り、両者間には昭和二〇年四月四日申立人が、昭和二七年九月一日北山静夫が、それぞれ出生し、被相続人が死亡する(昭和四〇年六月九日)に至るまで四名同居して生計を営んで来た。

(2)  しかし、被相続人の本籍が不詳であつたため、被相続人と申立人の母との婚姻届出はなされず、また申立人と静夫とは申立人の母の非嫡の子として出生届出された。

(3)  以上のとおり、申立人及び申立人の母・静夫は、いずれも実質的には被相続人の相続人たる地位に在るものであつて、被相続人の特別縁故者である。

(4)  そして被相続人には相続財産として別紙目録記載の物件がある。

(5)  なお、申立人の請求によつて昭和五一年六月一日大阪家庭裁判所において被相続人の相続財産管理人として阿部静枝弁護士(住所大阪市阿倍野区阪南町一丁目四番一六号)が選任され、昭和五一年六月一二日同管理人選任公告が為されたが、二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかつた。そこで、同管理人は同年八月一六日一切の相続債権者及び受遺者に対し同日の翌日から二箇月以内にその請求の申出をすべき旨公告したところ同期間内に申出をする者がなかつたので、同管理人の請求によつて同年一一月六日同家庭裁判所は催告期間満了日を昭和五二年五月一五日と定めて相続権を主張すべき旨公告をしたが、同期限までに相続人である権利を主張する者がなかつた。

(6)  よつて申立人は、被相続人の特別縁故者として、被相続人の相続財産である別紙目録(略)記載の物件の分与を求めて本申立に及ぶ。

二  よつて調査するに、当庁昭和五一年(家)第九七七号相続財産管理人選任事件、同昭和五二年(家)第二六八九号相続人捜索公告事件の各一件記録及び本件一件記録によると、申立の実情記載の事実が認められるところ、申立人は被相続人と生計を同じくしていた者というべきであり、また相続人たる権利を届出るべき期限である昭和五二年五月一五日に引き続く三ヶ月以内に申立人のほかに被相続人の特別縁故者として被相続人の相続財産である別紙目録(略)記載の物件の分与を請求する者がなかつたので(申立人、申立人の母、北山静夫はいずれも被相続人の特別縁故者であるが、三者間において協議のうえ、申立人のみが本件分与の申立をすることに決めたものである)、同物件を申立人に分与するのが相当である(なお、法例二七条二項の「国籍ヲ有セサル者」には国籍の有無自体が不明な者をも含むものと解すべきところ、本件被相続人については本籍、父母、兄弟、出生地などが不詳である((当庁昭和五一年家第九七七号相続財産管理人選任事件における北山信子、北山通夫の当庁調査官大峰昭一に対する陳述、その他本件に表われた一切の事情による))ところから、日本国籍を有する者とは速断し難い反面、外国籍を有する者若しくは無国籍者とも認め難いところであつて、国籍の有無自体が不明な者と解されるので、本件については同条同項前段、同法二五条により大阪市内に住所を有した被相続人の本国法と看做される我が民法の適用さるべき場合と解せられる。)。

よつて、相続財産管理人阿部静枝の意見を聴いたうえ、本件申立を相当と認め、主文のとおり審判する。

(家事審判官 斉藤光世)

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